乳がんの
手術を受けられた
あなたに、
今後の適切な
乳がん治療の選択を
お手伝いいたします。
乳がんの再発と
術後補助療法について
乳がんは手術により腫瘍部位を摘出できても、目に見えない小さながん細胞が数年後に再発するリスクを有しています。このため乳がんの再発を減少させる目的で、術後に補助療法(ホルモン療法、化学療法、放射線療法等)を行うことが一般的です。
しかしながら乳がんは多彩な遺伝子異常を背景に異なった特徴を持っています。したがってそれぞれの患者さんのがんの特徴に応じた治療法を選択することが必要になってきます。
これまで治療方針の決定には患者さんの年齢、がんの大きさ、転移の有無、がん悪性度等から判断してきましたが、より信頼性の高い再発リスクの予測方法を加えることで、それぞれの患者さんにより効果的な治療が選択できるようになりました。
PAM50遺伝子検査について
このサイトで示されるPAM50遺伝子検査は、手術により摘出したがん組織の中から50個の遺伝子を選び出し、その遺伝子発現を解析することによって、患者さんのがんの個性がどのようなものであるか、将来の再発リスクはどれくらいなのか等を調べる検査です。このような患者さんのがん細胞に関する科学的な情報はひとりひとりの患者さんに適した術後の薬物療法を選択するための手助けになります。
検査でわかること
PAM50遺伝子検査の結果、術後10年経過時点での再発リスクが推測されます。乳がんの再発リスクが低いと判定された場合、不必要な術後化学療法を省略することで、抗がん剤による副作用を軽減できるかもしれません。
逆に、乳がんの再発リスクが高いと判定された場合、適切な術後化学療法を行うことによって、乳がんの再発の可能性を低く抑えることが期待されます。
さらにPAM50は乳がんのサブタイプを遺伝子のレベルで正確に分類することができます。
PAM50遺伝子検査だけでは、再発リスクを100%予測することはできません。最終的な治療方針の決定は、手術によって得られた情報や他の検査の結果も総合的に判断し、患者さんご自身と主治医の先生が相談して決めて頂くことになります。
PAM50遺伝子検査を受けることができる方
乳癌の手術を受けられた閉経後の患者さんの中で、
以下の方が検査の適応になります。
- ホルモン受容体陽性、リンパ節転移陰性、
ステージIまたはIIで術後内分泌療法を受ける予定の方。 - ホルモン受容体陽性、リンパ節転移陽性、
ステージIIまたはIIIAで術後内分泌療法を受ける予定の方。
検査の実施方法
手術により摘出した乳がんの切除組織から、
がんの再発に関係する遺伝子の発現量の測定と解析を行います。
新たな採血や組織の摘出は必要ありません。
PAM50遺伝子検査結果報告内容
- ① 再発リスク(ROR)
10年間の遠隔再発の確率を推定し、
0 から 100 の再発リスク スコアで示します。 - ② サブタイプ分類
検査検体のサブタイプがLuminal A、Luminal B、
HER2-enriched、 Basal-like のいずれかを明らかにします。 - ③ リスク分類
RORスコアを、高、中、低リスク分類します。
結果について主治医の先生と相談
PAM50遺伝子検査の結果を参考に、
主治医の先生と相談して具体的な治療方針を決めます。
検査の費用について
PAM50遺伝子検査は現在、健康保険の適用外となっています。
監修:京都大学大学院医学研究科乳腺外科学 准教授 髙田 正泰